今回はT-バドについて、少し書いてみます。
最初の試作は1997年の8月でした。
きっかけは、当時お店で流行り、威力を再確認したビッグバドを、もっと楽に使えないか、という単純な動機でした。バドのブームに火が着くもっと前の頃です。
いろいろとアイデアを重ねて、友人のツカダ君にプロトタイプを作ってもらい、その後も幾度となく改良を重ねています。
ただT-バドは、プロトタイプですぐに結果が出てしまった幸運な製品でした。
津久井湖中村ボートから出船し、給水塔左の鐘が淵でいきなりヒット。
三井大橋を過ぎて日赤下では、50センチクラスのバスが何匹も沸いて出るようにT-バドを追いかけてくる。
ご存じの通り、津久井湖はハイプレッシャーな湖。
ワームや最新リグで魚はスレまくっており、その中でもこれらの有名ポイントは徹底的に痛めつけられている場所です。ワームでも全くヒットしない状況で、ビッグバドにも怯えるバスが、Tバドプロトでわらわらと沸いてくる。
今でもよく覚えていますが、Tバドを追う中で一番大きなバスがヒット。しかし痛恨のバラシで終わってしまい、それで開発意欲に火が着きました。
その後、プロトタイプを作ってはテストを重ね、さらに店に来るお客さん達にも使ってもらって釣果を確認しました。
何十というプロトモデルを試していると、ボディサイズやバランスには黄金比率が存在する事に気づきました。
実用的なボディ径に対して、長すぎても短すぎても魚は興味を示さなくなります。
フックのバランスも、泳ぎの安定性やフッキング率に大きく影響する。
テールのフラップの位置や音を出す為のリグや金具もテスト。しかし変な小細工は不要である事に気づきます。(ただしテールフラップ用のヒートンの突き出し長には意味があります)
リップもウッド、プラスチック、べーク板(基盤)、金属と試してきて、結果として鈍い光を放つアルミ板が最良の釣果を示す事となりました。
これらの答えに行き着くまでに、延べ数千回の釣行となっていたはずです。
先に書いたように、自分だけでなく沢山のお客さん達に使って貰った上での回答。ベテランから初心者までの釣果から得られた「魚に聞いた答え」です。
なおハンドメイドバルサ+ウッドの弱点として、ヒートンの回転や緩みがあります。魚を釣って行くうちに、緩んで回ってしまいがちなので、沢山釣った釣行後などはチェックしていただき、ヒートン部分に瞬間接着剤などを染みこませてメンテする事をお勧めします。
また、意図的にバランスを崩していますので、ロットによっては多少泳ぎが左右に傾く場合があります。これが嫌な方はアルミリップを多少曲げるなどのトゥルーチューンをしてみてください。リップのチューンが上手く行くと、ノーマル以上の働きをします。
引き方は、光量が少ない時ほどスローにリトリーブしていくのが基本です。使い始めのうちは、ロッドを立てたまま、音が出るかでないか程度のデッドスローを基準に、止めずにリーリングしてください。予想以上の働きをするはずです。
ことにこういうルアーはマディ系でしか釣れないと思っている諸兄、Tバドは全国有数の釣れないダム湖で開発されていますので、リザーバーは得意中の得意。私は池原ダムに行く度にパラダイスを味わっています。
クリアウォーターの芦ノ湖やハイプレッシャーな山上湖、富士五湖に通い込んでいるお客さんもよく釣ってきますので、水質やフィールドを問わずに使っていただきたいと思います。
フィールドが変わってもバスはバス。バスの本能にスイッチを入れるのが、Tバドなのです。
※現在、当店在庫はアユカラーのみ僅少ですがあります。実物に興味ある人は、覗きに来てください。